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国連で必要な英語力【国連勤務30年の経験者による解説】


このページでは、国連で30年の勤務経験を持つアデュールの英会話講師が、「国連で必要な英語力」についてご紹介します。
国連や国際協力、国際開発分野での仕事に関心があり、ご自身の英語力に不安をお持ちの方のご参考になれば幸いです。

以下、目次の中の気になる項目をクリックしていただくと、その箇所にジャンプできます。

1. 私の経歴

皆様、はじまして。長田こずえと申します。

私は、米国のカリフォルニア州立大学の大学院卒業後、国連にて、ILO(国際労働機関)時代にジュネーブ、中東地域事務所でイラク、ヨルダン、レバノンを経験し、その後、ESCAP(国連アジア太平洋経済社会委員会)時代は東チモール、タイのバンコク、ニューヨークの国連本部では、開発政策課長として5年ほど、最後はパリに本部のあるUNESCO(ユネスコ)のパキスタン所長・代表として3年半、パキスタンのイスラマバードで任務を果たしました。途中1年休職して、米国のJohns Hopkins University で二つ目の修士号を国際行政政策学(Master of International Public Policy )でとりました。

国連退職後は日本に戻り、名古屋の私立大学で10年間、国際文化学部の教授として後輩の指導を継続してきました。

2. 国連の職員とは

国連組織は基本、加盟国193-194ヶ国の税金で賄われている公的機関、そこで働く職員たちはいわゆる国際公務員です。NGOや民間組織でありません。日本の外務省の外交官と異なる点は、日本国籍であっても日本を代表せず、国連組織としての外交を担います。

仕事の内容は、平和維持と安全保障SDGSなど開発協力人権保護が三つの柱です。国連はニューヨーク本部だけではなく、ユネスコ(本部はパリ)、WHO(本部はジュネーブ)、アフリカ諸国などで活動を続けているUNICEF(本部はニューヨーク)、アフガニスタンやパレスチナなどで平和活動を行っている地域ハブ組織など、100以上の組織で成り立つ国連ファミリーです。

3. 国連の公用語と主要言語である英語の重要性

国連の公用語は6か国語ありますが、日常で使用される言語は基本英語です。つまり、職場での会話、会議、書類、研究、交渉、外交すべて100%英語でこなすことになります。国連職員時代は英語が日常語になるということですね。

従って、英国人や米国人など英語圏の人以外は、ドイツ人もフランス人も日本人も皆さん英語が超出来る人が職員になりますが、毎日の職場では逆に母国語でないハンディーキャップを一生抱えて、それ以外の専門性やリーダーシップ、チームワークなどに率いでていることで生き延び、活動する世界です。

私は、米国人の元外交官の夫と結婚してほぼ35年目ですが、もちろん家でも100%英語を使用していますので、国連勤務時代、公私ともに英語がずっと主要言語でした。

現在日本人の国連職員は男女比率が半々くらい、また、外交官の子女のようないわゆる帰国子女が50%くらいであると思います。私自身は、幼少時代の海外生活期間は短かったので、ほぼ日本育ち、いわゆる純ジャパですから、多くの努力は必要ですが、日本で生まれ育った普通の人でも国連で働くことは可能です。

4. 日本人が国連の職員になるための道すじ

日本人の一般的な若者が国連職員になるためには、コネや紹介ではなく、FAIRです。
外務省の国際機関人事センターが主催する、邦人向けのJPO、アソシエートエキスパートの制度があります。30歳前後の人が対象で、英語力は大体英検1級レベル、学歴は英語以外の専門(経済学、教育学、法学、国際関係学、MBAなど)で大学院修士レベルが必要です。どんなに英語が得意でも英語学や文学など、国連の活動に関係ない修士では無理です。
英語圏の米国、英国などの大学院出身者が採用される可能性が高いですが、日本の大学院でも基本はOKです。

この制度は、外務省が将来性のありそうな若者を厳選して、2-3年間、国連ジュニア職員の給料を日本政府から支給してその間にキャリアアップをしてもらい、出先の国連機関において業績をあげ、コネを付けて、終了後は自分で仕事を探すという制度です。終了後にはほぼ半分くらいの人が国連に入職できるのではないかと思います。

私自身も米国の大学院卒業後、この試験に合格し3年間、スイス・ジュネーブのILO(国際労働機関)に送られて、その後幸運にもそのまま国連での仕事に就く事ができ、30年間、大変有意義に国連に貢献することが出来ました。

5. 国連職員になる為の学生時代の準備、学歴、英語力

ここでは、国連職員になる為に必要な英語力や、中学、高校、大学の学生時代に準備できる事、どのような学歴を持つべきか等についてご紹介します。

5-1. 最低限の英語力

国連職員になるためには、まず英語力は、最低限、英検1級レベルTOEICならば900点以上TOEFLは600点以上、 TOEFL-IBTならば95点以上は必要です。但し、これは上記の外務省主催の試験を受けるとき、入職レベルの英語力ですから、じっくり準備はできます。

5-2. 中学・高校時代の英語準備

帰国子女ではない純ジャパの子供でも、中学や高校からでも頑張って準備を始めると、国連職員になる為の英語力をつける事は可能です。

むしろ、学生時代にそのように高いハードルを超えて頑張ってきた人の方が実際の職場では伸びる、出世すると私は個人的に考えています。なぜなら「頑張り屋さん」だからです。中学時代は英検2級、高校卒業までに英検準1級、大学卒業までに英検1級を取れるのが理想的です。

5-3. 大学進学と大学時代の準備

国連では、大学学部レベルの専門性は問われませんが、基本的に大学院修士レベルの専門性が問われますし、今はさらにハードルが高く、入職レベルで博士号の方も一定数いらっしゃると思います。

大学は基本どこの大学でもOKではありますが、国連職員の母校として統計的に多いのは、日本の大学では上智大学、東京外国語大学、大阪大学外国語学部、国際基督教大学、早稲田大学、慶応義塾大学、立命館アジア太平洋大学、関西学院大学、その他の国立大学あたりでしょうか。

海外の大学では、米国のハーバード大学、英国のロンドン大学、私の母校である米国Johns Hopkins University、そのほか、オーストラリアの大学など様々ですが、全体として、米国、英国、豪州あたりの大学院卒の方が採用される確率が高いです。知名度が高いのと、やはり英語力が大きいのだと思います。その他、シンガポールやフィリンピンなど準英語圏の大学院卒の方もいらっしゃいます。日本でも英語で大学院教育をやっているところは良いと思います。

海外の大学に進学を希望される場合は、TOEFLなどで、ある程度高い英語力が求められます。また、大学学部在学中には第2外国語はフランス語を取ることをおすすめします。外交の世界では英語の次にはフランス語です。実際、国連公用語は6つありますが、その中でも職場で必要なWORKING LANGUAGEは英語、フランス語の二つです。フランス語を学ぶことにより、気品のある国連好みの英語力もつけられると思います。

5-4. 英語試験の重要性

純ジャパ出身で国連職員として30年働き、大学教授を10年務め、家族は米国人の私の経験からすると、受験英語や英検、その他の検定に重きを置かず、英語ネイティブ講師にあこがれるだけの英語学習の路線は間違っていると思います。

英語のネイティブっぽい発音やスラングに憧れる気持ちは分かります。ただ、そちらが先行して、なんとなくそれっぽい英語ばかりをやっていても、実務の場ではやはり、英語力の絶対的な基盤が重要になってきます。そういった意味で、英検、TOEIC、TOEFL、その他の英語検定は今のあなたのレベルを測るには最適なスケールです。その点数が今のあなたの英語のレベルです。私は、大阪の山の中の英語学校に通い英検を受けまくり、英語では有名な東京外国語大学に進学し、TOEFLを頑張って米国の大学院にやっとこ入り、国連に長く勤め、努力の末、やっと、帰国子女に追いつけ追い越せをやれるようになりましたが、自分自身の経験からも、自分の英語レベルを測るには英語の検定試験は最適なスケールだと感じています。

私はこの経験とこの年齢でも、昨年、英検1級を取り直し、TOEFL、TOEICを受け直し、常に最新のスコアを誇り、甘んじません。昔取った杵柄は通用しませんし、常に努力を怠りません。

また、国連に入職する段階でのアソシエートエキスパートを受けるときには、確か、国連英検の特A級を持っていると優遇されるのではと思います。私も30年国連に勤め、退職後に特A級を受けて受かりましたが、ちゃんと準備して受けました。かなりむつかしく、英検1級とは比較にならないと思います。あまり有名な検定ではないですが、国連に入りたい方であれば、ご存知なのではないでしょうか。

6. 国連での英語

6-1. 入職してからの英語

外務省の国際機関人事センターが主催する邦人向けのJPO、アソシエートエキスパートの制度で無事アソシエートエキスパートに選ばれると、国連諸機関に送られます。晴れて国連職員となるわけで、インターンではありません。給与が外務省から支払われるだけで、国連のジュニア職員です。

私はジュネーブのILOに20代の終わりに送られ、仕事は英語でしたが、フランス語なまりの強い英語、また、日常生活はフランス語ということになってしまいました。ただ、国連は語学、PC, drafting など職員訓練が行き届いているので問題は全然ありません。すべての書類が基本英語、一部フランス語ですから、毎日、きちっとした文章を書くことなどを仕事を通して学びます。 

6-2. 国連で使われる外交的な英語

国連の英語は、いわゆる米国なまりの強い米語でもなく、英国の英語でもありません。職員の8割は英語圏出身ではなく、ドイツ人、フランス人、インド人、アラブ国籍、アフリカ国籍、中国人やその他のアジア人など非英語圏の人ですから、きれいに話し、理論的に丁寧に話すことが必要です。

日本では英語ネイティブの発音(特に米国的な発音)を重視する方は多いですし、そのようにしている英会話スクールも多いと思いますが、国連では英語に母国語なまりがあることは基本的に問題視されません。多様性とアイデンティティーこそが国連の意義ですから、母国語なまりを恥じないで、誇りを持って話す姿勢が好まれます。とはいっても、皆さん英語は大得意です。インド人の職員や外交官などは、米国人(私の夫も米国の外交官でしたが)よりも格調高い英語を話します。もちろん、アクセントはありますが、それは問題ではないのです。 

ここで少しだけ国連的な英語の例を挙げましょう。 

一般的な英語

The opening ceremony will start at 9 am.
(オープニング9時に始まりますよ。)

国連での英語例

The inauguration ceremony will commence at 9 am.
(オープニング9時に始まりますよ。)

上記2文はどちらも全く同じ意味ですが、国連での英語例では、フランス語に由来する英語、commence(始まる)やinauguration(オープニング )を使っています。フランス語系統の単語を選ぶのは国連スタイルです。格調高くなります笑。

その他、in lieu of XXXX (XXXXの代わりに)も超フランス語的です。これも国連的な英語です。また、国連にはフランス語圏の人が多いので、英語のappointmentの 代行として、フランス語の rendez-vous を使う人も割といます。日本語のランデブーはちょっと異なった意味になっています。

6-3. 国連で私が英語で困ったこととその対応

私の場合、はじめはそれほど英語を話すのが得意ではなかったので、英語の言い回しに慣れておらず、アメリカの大学院を出たとはいえ、国連の口達者な外交官達と英語で対等にやれるようになるには15年ほどかかりました(夫は米国人でしたから、普通の英語、家で普通に話す英語などは慣れきっていましたが)。

国連で昇進すればするほど、人前でのスピーチも増えますし、特にパキスタン時代はユネスコ所長でしたから、英語でのテレビインタビュー、新聞インタビューが頻繁にありました。BBCやカタールの国営英語放送局のインタビューなども経験し、そういった経験を通じて、英語の力は更に磨かれました。

加えて、私はもともと人前に出るのが好きで、おじけづかない、割と理論的である点などは国連のキャリアでは有利に働いたと思います。国連機関代表としては数少ない女性トップであったこともイスラム教のパキスタンにおいては、逆に受けが良かったのではと思います。

国連で働く場合、勿論、高い英語力も必要ですが、コミュニケーション力もとても重要だと思います。曖昧な表現をする方や、自己主張できない、理論的に話せない方はバリアが高いと思います。声も大きい方がベターです。

7. 長期的に英語を学ぶことの意義

21世紀はGLOBALIZEDした社会です。「国際的」という言葉にあたる英単語には international,  global,   universal の3つがありますが、それぞれ意味が違い、国連では違いがはっきりしています。

International は、まさに国連機関のように、国家 nation-state、国 nationを軸にした「国際的」です。
2つ目の Global はグローバル市民のように、国だけではなく民間企業と市場、NGO、一般市民を含めた地球規模の、つまり、地球儀的、GLOBE的な国際性です。global + localを合わせたglocal=グローカルも同じです。
そして、さらにそれを超越した一番上のuniversalが3つ目です。宇宙レベルですね。universal human rights(すべての人の人権‐国籍は関係ない)、 ユニバーサルデザイン(すべの人にやさしいデザイン)など、国や地球規模を超えて、もう宇宙的な絶対レベルの基本的な権利です。これは宇宙的権利ですから、日本人ファーストやAmerica First といったものとは全く異なった逆視点です。これこそが英語の裏にある国連の価値観でしょうか。

英語は21世紀には、唯一の世界共通語、つまりユニバーサル言語になりつつあります。英語は、アメリカ、イギリス、豪州言語だけではなく世界共通語です。発音、なまり、言い回しも多様な国際言語です。

国連に入職しようがしまいが、英語を学ぶことによって人生が広がります。世界各国の人と友達になれる、世界の情報が簡単に手に入る、BBCやCNNを鑑賞して欧米や世界のものの見方や世論を客観的に理解できる、映画やTV番組、世界のトップセラーの小説などを原語で読める(翻訳モノとは異なります)、(インターネットで検索できる情報の大半は英語ですから)情報通になれる、そして自分に自信が持てるようになる方もいらっしゃると思います。この中のどれか1つだけを取ったとしても、人生が広がりますよね。

ただ、英語学習というものに終わりはありません。学校を出たら終わり、国連に入ったら終わり、退職したら終わりではなく、英語は生涯学習ですから、退職しても、超シニアになっても継続して学び続けることが必要であると思います。果てしない道のりですが、言語を学ぶことは楽しいことですし、小説や英語のテレビ番組に限らず、NetflixやYouTubeプログラムなど、今の時代はいくらでも楽しく英語を学べるツールが揃っています。

国連へ入職されるされないに関わらず、ぜひ、生涯学習として英語を学んでください。必ず人生が広がります。


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