薬品会社の海外開発と海外営業で必要な英語スキル

2021年9月15日

薬品会社の海外開発と海外営業で必要な英語スキル

今回は、アデュールの英会話講師の中で、薬品業界で長年の実務経験を持つ講師による「薬品会社の海外開発と海外営業で必要な英語スキル」というテーマとなります。


私は大手薬品会社を中心に、長年この業界で海外開発と海外営業に携わってきました。ここでは、私の海外経験をもとに、専門知識、技術的な知見を備えている事を前提として、海外開発と海外営業で必要な英語スキル、海外での交渉の重要なポイントについて述べさせていただきます。

 

1.自己紹介

1.自己紹介

私は地方の国立大学農学部を卒業後直ぐに大手薬品会社に入社、半年後に農薬事業部開発部に配属されました。
配属された部署は、既存品の海外開発を担当する部署で、僅か4名の弱小課でした。技術担当者は新入社員の私だけで、結局日本その他数か国で販売実績のある自社創成農薬の日本以外での既存市場における拡売及び新規市場の開拓(市場調査から登録・上市・販売までの営業活動を含む全ての)業務が担当でした。

弱小だった課は、その後海外営業室になり、海外営業部になりますが、部になった途端に今度は新規剤の欧米マルチナショナル農薬会社との世界市場対象の共同開発を担当する開発部に異動になり、同新規剤を含むいくつかの剤の欧米での共同開発をリードする立場になりました。本当の意味での英語力が問われる様になったのは、この時点からでした。

その後、所属していた事業部が大手化学品会社に買収され、同社に転籍、同社の国際アグロ事業部に配属されました。ここでは、年に一度グローバル開発会議が開催され、同会議では参加者全員が英語で発言することが要求されました。欧米の人達は、プレゼンは勿論、ディベート能力が日本人に比べると格段に上でした。幸か不幸かこの間に世界約55か国に出張し、首都だけでなく地方回りも経験させて頂きました。面談者は農林水産大臣から農家の方まで多岐に渡りました。

続いて、上海の子会社に出向・駐在を経験し、その後、中国系商社出向や、中堅農薬会社の海外営業部立ち上げ(東証一部上場に貢献)にも携わり、現在は、個人事業主としてコンサルタント業を行っております。クライアント様の殆どは、新規農業関連商材の海外展開ということで、社会人人生の殆どの時間を英語と共に歩んでいると言っても過言では無いかと思います。

 

2.多くのビジネスは片言英語+ボディーランゲージで出来る

2.多くのビジネスは片言英語+ボディーランゲージで出来る

最初に海外出張したのはフィリピンで、配属後1年目の頃でした。
フィリピンは、英語とタガログ語が共通語です。ビジネスは当然英語になります。当時の私は未だ英語が話せるというレベルではありませんでしたが、上司には「問題ありません」と言って出張することにしました。「片言の英語と少しのタガログ語とボディーランゲージで何とかなる」と考えていました。勿論、英語のヒヤリングは必須だと理解していましたが、大学3年生の時から英語のテープをほぼ毎日聞いていましたので、何とかなるだろうと考えていました。

面談予定者、協議内容、協議の落としどころ、その他を想定して、英語のメモ書き(一覧表)を作成して、上司の内諾を得た上で出張しました。また、フィリピンの紀行文を何冊か読んで、同国の歴史、文化、その他の概要を頭に入れると共に、必ず使うであろうタガログ語を覚えていきました。

面談時は、あらかじめ準備した英語のメモ書きを見ながらこちらが言いたいことを先ず話し、質疑となる様に仕向け、出来るだけこちらから質問することを心がけました。相手から質問される前に、こちらから質問するというのは、自身の英語能力及び知識不足を相手に見透かされない為の一つの方法かと思います。面談の最後に、協議内容のメモ書きを提示して内容に齟齬が無いかを確認しました。特に、アクションプランについては丁寧に確認しました。一般的に日本人の英語を話す能力は必ずしも高くないと思いますが、読み書きの能力では、それほど劣っていないと思います。むしろ高い方かと思います。という次第で、初出張は問題なく終わりました。

準備と度胸さえあれば、(少なくとも自分が従事している分野では)片言英語でビジネスは出来る。フィリピン出張を終え帰国した時そう思いました。ただし、英語のヒヤリング能力は必須です。

 

3.技術的な事を話す際の通訳の難しさ

3.技術的な事を話す際の通訳の難しさ

海外出張を始めて3年目くらいから日本人の通訳を外しました。
私が話した内容と通訳の内容が必ずしも一致していないことが多々あり、相手に誤解されたと感じたこともあったからです。原因は当然ながら日本人通訳の英語力ではなく、技術的な知識が無い事でした。

「何が言いたいのか?」、「言いたいことを相手が理解できるように話せるか?」が無いと英語能力があっても会話にはなりません。技術的なことを話す時は、特に英会話能力よりもむしろ技術的な知識の方が重要です。技術的な情報を正確に相手に伝えるためには、書面を用意して丁寧に説明することで対応可能です。勿論、相手も技術屋さんである必要があります。

 

4.日常会話には教養英語が必須

4.日常会話には教養が必須

ビジネス会話は片言英語である程度出来る部分は多いと思いますが、食事をしたり、観光をしたりという場面では実は片言英語だけでは足りません。

日本の歴史、文化、芸術、地理、気候、その他の知識は勿論、相手の国の歴史、文化等の知識とそれを英語で理解している事が必須になります。これが出来ないと会食の時、特に困ります。話すことが無いので、ついつい仕事の話になり、話してはいけないことまで話してしまう人が多かった様に思います。

私は、日頃から心がけたことがあります。ちょっとしたストーリーをいくつか英語で話せるようにしておくのです(笑い話等)。事前に英訳したり、英語のネタ本を読んで記憶しておけば良いかと思います。世界共通の話題、誰でも興味を示すようなストーリーをいくつか準備しておくのです。

ある程度上層階級の方々を相手にする場合は、世界の経済状況と今後・・・などというネタも仕入れておいた方が良いかも知れません。宗教、政治ネタは避けた方がベターです。

秘密情報が漏れるのは殆どが会食の場です。多くの場合、部課長以上の方々の口からです。英語で雑談が出来ない、話題が無い(少ない)、ということで、上述の通りですが、ついつい仕事の話になり、相手の質問にアルコールのせいもあって、つい口を滑らせてしまう様です。

 

5.海外出張では日本語のメモが追い付かなくなる

5.海外出張では日本語のメモが追い付かなくなる

当時海外出張には、丸善のMEMORUNDAMを必ず持って行きました。
細長い薄っぺらなメモ帳です。出張前に、スケジュール等を記載しておきます。面談時には、このメモ帳に協議内容を走り書きします。

始めは日本語でメモを取るのですが、途中から自然に英語でメモを取る様になります。日本語で書く、すなわち、いちいち頭の中で都度英語を和訳しているわけですが、時間と共にその必要が無くなるのです。こういう現象が出張毎に起こりました。大体出張3日目頃だったかと記憶します。

走り書きした日本語及び英語のメモは、別のメモ帳に整理して書き留めておきます。記憶は時間と共に怪しくなりますので、この作業は出来るだけ早めにします。この整理メモが結果的に出張報告書になります。

 

6.仕事は人生論から始める

6.仕事は人生論から始める

当初海外出張する時は、商社の日本人の担当者が必ず一緒だったのですが、海外出張をする様になって3年目頃から「同行不要、但し、現地ではローカルスタッフ(外国人)の方に同行する様お願いしたい」としました。

ということで、海外出張時は、商社のローカルスタッフの方と現地の販売代理店他の方々と面談することになりました。

勿論、車内、食事、その他当該国の生活の殆どの時間はこのローカルスタッフと行動を共にします。出張目的、面談者との協議内容等については、当然ながら事前に確認しますが、車内や食事中には出来るだけ人生論、自身の価値観(考え方)等の話をしました。こういう話をしながら相手の考え方や知識レベル、性格等を把握します。

共感できることが多い方との仕事はやりやすいですし、楽しいです。仕事もうまく運ぶ確率が高かった様に記憶します。お互いを理解するまでは多少時間を要する場合もありますが、先ず、良好な人間関係を作る(お互いのことを知る)ことが成功への早道だと思います。

 

7.英語は結論から話す

7.英語は結論から話す

英語は、最初に結論が来ます。その後に説明、説明も重要な説明から些細な説明という順番に来ます。

日本語は真逆です。些細なことから始まって最後に結論が来ます。この違いが日本人の英語下手と関係があるかもしれません。人によっては、最後まで結論をあいまいにしたまま終わる方がおられます。

上司と同行出張した際に、上司が「検討させて頂きます」と回答した際、私は「日本人の『検討します。』は、NOですので誤解なさらない様にお願いします」とよく付け加えたものです。上司がどう思われたかを確認したことはありませんが、恐らく不快に思われたかと思います。。

 

8.自分の意見を明確に英語で言える事の重要性

8.自分の意見を明確に言う事の重要性

欧米の方々と会議をして困ったことがあります。
同行した上司及び同僚の多くが、「この件は、持ち帰って検討した上で後日回答させて頂きます」とか「本件については、私どもに決定権がありませんので、・・・」という回答をすることでした。

相手方は、「それで、あなたの意見は?」と思っていたはずです。実はこの時点で、そう答えた日本人は、本件から外れることになります。言った本人だけが理解していないだけです。この時点で、双方の協議はほぼ決裂です。

協議を継続したい場合は、自身または会社の意向を明確に英語で言える能力のある人を送り込む必要が生じます。

 

9.グローバル人材とはどういう人の事を言うか?

9.グローバル人材とはどういう人のことを言うか?

グローバル人材の育成が必要だということがよく言われます。
それでは、グローバル人材とはどういう人のことを言うのでしょうか?グローバル人材とは、「確固たる自身の価値観を持っていて、価値観の違う人を自分の価値観に引き込めるだけのコミュニケーション能力を持っている人」だと考えています。

これからグローバル人材を目指す方は、英会話の勉強は必須ですが、自身の明確な価値観、一般的な教養を持つ事を意識していただきたいです。今現在それらが無くても、勉強すれは備えられます。

また、現時点のレベルで正直に話す事も大切です。誰かの受け売りや知ったかぶりをすると必ずしっぺ返しが来ます。あくまで自然体で振る舞うことです。そういうことが出来る人はもうグローバル人材の扉の前にいると考えても良いと思います。一人でも多くのグローバル人材が育って欲しいと思います。